水江未来監督作品 『ワンダー・フル!!』

MIRAI MIZUEハッピーが好きだ

 
 

DIRECTOR’S STATEMENT

息を吸って、息を吐く、呼吸をすることは僕らのパーソナルなリズムであり、
身体に内在する原初的な音楽だと思います。

一日が始まり、一日が終わる。それは、呼吸であり音楽。
命が生まれ、やがて死ぬ。それも、呼吸であり音楽。
僕らも、動物も、植物も、昆虫も、魚も、みんな音楽。

一つ一つの音楽は、決して全てが美しい音色な訳ではなく、不恰好な音色や、やかましい音色、耳を澄まさねば聞こえてこない小さな音色もあります。
しかし、それらの無数の音色が、重なり合い、すれ違い、響き合い、ぶつかり合い、それが世界という一つの音楽になっているのだと思います。

命は不思議で、奇跡的で、驚きで、生きることはワンダーの連続です。
僕は、それをアニメーションで表現し始めました。

今回、僕の作品をまとめて見ていただく機会を初めて得て、
2003年からほぼ10年間にわたる作品を、できるだけ自然に見ていただけるよう、画のサイズや音量を調整し、ひとつの長編作品を作るつもりで、または組曲を構成するように順番を考えました。
(想像もつかない昔から、たくさんの生と死が繰り返されているのだから、僕が感じる事が出来たのは、ほんの一握りかもしれません。)

僕らの身体は、地球のある銀河系に存在している恒星の数よりも遥かに多い、60兆個の細胞で出来ています。
その細胞一つ一つに命があり、生と死がひたすら繰り返されている。
世界はいつだって、ワンダーに満ちている。
不思議と、奇跡と、驚き、めいいっぱいの幸せを感じていただけたら本望です。

ーー水江未来

 

PROFILE

水江未来 監督・アニメーター

1981東京生まれ。3歳のときに完璧な円を描いて周囲を驚かせる。多摩美術大学でグラフィック専攻。描いたイラストが動いて見えると言われたことをきっかけに1人でアニメーションをつくりはじめる。全ての原画を手で描き、1枚1枚をコンピュータにとりこんで動かすアニメーション作法と、その原画の完成度の高さとが、国境もアニメーションの枠も超えて人々の心を虜にする。在学中の処女作『FANTASTIC CELL』(2003)が文化庁メディア芸術祭で審査委員会推薦と同時に世界デビュー。卒業制作『LOST UTOPIA』(2007)が世界80以上の映画祭で上映、作った短編アニメーションはつねに世界各国で愛され続けてきた。2011年作品『MODERN No.2』が世界三大映画祭のひとつ・ベネチア国際映画祭(イタリア)オリゾンティコンペティション部門で正式上映され、世界最大級のアニメーション映画の祭典・アヌシー国際アニメーション映画祭(フランス)で最優秀映像音楽賞(SACEM賞)を日本人として初受賞。広島国際アニメーションフェスティバル他国内外の映画祭で選考委員、審査員をつとめる他、「ブレーキ」(山田悠介著)表紙などイラストレーターとしても活動。日本アニメーション協会・理事。多摩美術大学非常勤講師。

 
 

水江未来、創作の素

◎僕は「人の話を聞いていない」とか「ボーッとしている」とか、よく言われます。いつも頭の中でいろいろ想像を膨らましてしまうからなのですが、僕の頭の中には創作のアイデアが沢山あってドンドン増えているのです。このまま増え続けると危険です。

◎頭の中のアイデアは形にして外に吐き出さないといけません。頭の中に残すと、次々と生まれるアイデアで溢れ、やがて頭の中は爆発するのではと思います。

◎僕は「熱量」が創作を始める大きなキッカケで、とにかく自分が燃え上がってるうちに頭の中のモノを形にして外に吐き出したいと思います。

◎年々、加速度的に制作ペースが上がり、作品が完成すると、まだ自分の中に創作の「熱」が燃えているうちに、次を作ってしまえと考えるようになりました。

◎なかなか難しいなと思うのは、僕は作りたいものが3つくらい同時にあって、いっぺんに作ることは出来ないので、1つずつアニメーションを作っています。

◎湧いたアイデアは形にして外に出せば、次々に湧いてくる新しいアイデアを順番に形に出来ます。

PRODUCTION MEMO | アイデアについて

水江未来が描くアニメーション

◎どんなに良く描けても、一瞬で画が流れ去ってしまうのじゃないですか。それが面白い。一瞬一瞬面白い形とか動きとかがあっても、直に次の形にどんどん行ってしまって。いったん止めてじっくり見たいのだけれど、それができないという心地よさがあるんですよ。だーっとイメージが流れてしまう、押し流してしまう感じというか。そういうのが、アニメーションの面白さの1つだと思うんです。

◎自分のアニメーションというのは、小さい命が生まれたり死んだりしながらどんどん命が繋がって、大きく膨らんでいくイメージがあります。

◎何も無いところから卵のようにひとつ命が生まれて、だんだん複雑な生物になっていって、それが繁殖して生態系のようなものになって、世界に広がって、どんどんどんどん生命が増えて広がって‥そんなところで作っている。

◎わりと若い人たちを意識してつくる。海外のイメージの時もあるし、国内の時もある。
海外だとアヌシーをイメージして、お客さんがワーッと湧く想像をしながら、こうなったらいいなぁと。

◎メロディや楽器の種類を細胞レベルで色調とデザインで視覚化していくことが出来れば、そのときアニメーションと音楽は本当の意味で1つになって、とても快楽的な世界に誘うことになる。

PRODUCTION MEMO | 水江未来が描くアニメーション

水江未来の願い

◎音楽を聴く気持ちで見てほしい。

◎敷居が高くなく、シンプルに楽しめるものを提供していきたい。

◎完全にエンターテインメントとして作る。それが僕のアニメーション。

◎世界中を多幸感で溢れさせて、アニメーションで初のノーベル平和賞をもらっちゃお!

PRODUCTION MEMO | 水江未来の願い
 
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